日本の医療脱毛市場の現状と今後の展望

もくじ

はじめに

近年、日本における医療脱毛市場は着実に成長を続けています。美容意識の高まりや技術の進歩、価格の低下などが要因となり、より多くの人々が医療脱毛を選択するようになりました。本記事では、日本の医療脱毛市場の最新動向を分析し、市場規模、主要プレイヤー、技術トレンド、消費者動向、今後の展望などについて詳しく解説します。

日本の医療脱毛市場の規模と成長要因

日本の医療脱毛市場は2023年時点で約500億円規模に達しており、前年比10%以上の成長を記録しています。この成長の背景にはいくつかの要因が挙げられます。

第一に、美容意識の高まりがあります。特に20代から40代の女性を中心に、自己投資としての美容施術への関心が高まっています。また、男性の医療脱毛需要も増加傾向にあり、ひげや胸毛、背中の脱毛を希望する男性が増えています。

第二に、技術の進歩により施術の痛みが軽減され、より快適に脱毛が受けられるようになったことが挙げられます。最新のレーザー脱毛機器は従来に比べて痛みが少なく、効果も高いため、消費者にとって魅力的な選択肢となっています。

第三に、価格競争の激化により、医療脱毛がより手頃な価格で提供されるようになったことがあります。特に大手チェーンクリニックの参入により、相場価格が下がり、より多くの消費者が利用しやすくなりました。

主要プレイヤーと市場シェア

日本の医療脱毛市場は、いくつかの大手チェーンと多数の中小クリニックで構成されています。主要プレイヤーとしては以下のようなクリニックが挙げられます。

1. 湘南美容外科クリニック – 全国展開する美容外科クリニックで、医療脱毛も主要サービスとして提供 2. 銀座カラー – 脱毛専門クリニックとして高い知名度を持つ 3. ミュゼプラチナム – 低価格を武器に急成長した脱毛専門クリニック 4. 聖心美容クリニック – 高品質な施術を提供する美容外科クリニック 5. タカラクリニック – 美容外科と脱毛を組み合わせたサービスを提供

これらの大手チェーンは市場シェアの約40%を占めており、残りは地域密着型の中小クリニックや個人医院が占めています。特に近年は、低価格を売りにする新規参入者が増えており、市場競争が激化しています。

技術トレンドと機器の進化

医療脱毛の技術は近年急速に進化しています。主な技術トレンドとしては以下の点が挙げられます。

### レーザー技術の進化

従来の脱毛レーザーに比べ、より深部まで効果が届く長波長レーザーが主流になりつつあります。これにより、毛根へのダメージがより確実になり、施術回数を減らすことが可能になっています。また、痛みを軽減する冷却システムが組み込まれた機器も増え、施術時の不快感が大幅に軽減されています。

### IPLからレーザーへの移行

一時主流だったIPL(インテンス・パルス・ライト)脱毛機から、より効果の高いレーザー脱毛機への移行が進んでいます。特に医療機関では、より強力で効果的なレーザー機器が採用される傾向にあります。

### パーソナライズド脱毛

個人の肌質や毛質に合わせて、最適な波長やエネルギー量を調整する「パーソナライズド脱毛」が注目されています。AIを活用した肌診断システムと組み合わせることで、より安全で効果的な施術が可能になっています。

### ホームケア機器との連携

医療機関での施術と、家庭用脱毛機器を組み合わせた新しいサービスモデルも登場しています。これにより、通院回数を減らしながらも効果を維持できるようになっています。

消費者動向と市場セグメンテーション

医療脱毛市場の消費者は、年齢層や性別、目的によって大きく分類できます。

### 年齢層別の動向

20代から30代前半の女性が最も多く、全体の約50%を占めています。この層は「結婚式前」や「就職活動前」などのライフイベントをきっかけに脱毛を始めるケースが多いです。30代後半から40代の女性も約30%を占め、より長期の脱毛プランを選択する傾向があります。

### 性別による違い

女性が市場の約80%を占めていますが、男性の比率も年々増加しており、現在は約20%に達しています。男性の場合、ひげや胸毛、背中の脱毛が主流で、特にビジネスマンやアスリートからの需要が高いです。

### 目的別の分類

美容目的が最も多く、特に夏場の水着ラインやワキの脱毛が人気です。また、医療目的として、多毛症や毛深さに悩む人々の需要もあります。さらに、ひげ剃りによる肌荒れを防ぐ目的で顔の脱毛を選択する人も増えています。

価格動向とビジネスモデルの変化

医療脱毛の価格は近年大きく変化しています。主な傾向としては以下の点が挙げられます。

### 価格の低下傾向

競争の激化により、全身脱毛の相場価格は10年前の半額以下になっています。特に大手チェーンが低価格プランを打ち出したことで、市場全体の価格水準が低下しました。現在では、全身脱毛で10万円前後から提供しているクリニックも少なくありません。

### サブスクリプションモデルの台頭

月額制のサブスクリプションモデルを採用するクリニックが増えています。これにより、初期費用を抑えながら長期にわたって脱毛ケアが受けられるようになりました。

### 部位別単価制からパッケージ制へ

従来は部位ごとに料金が設定されていましたが、現在は全身や複数部位をまとめたパッケージプランが主流になっています。これにより、消費者はよりお得に複数部位の脱毛が受けられるようになりました。

規制環境と安全性への配慮

医療脱毛は医療行為として規制されており、医師または医師の指導のもと看護師が施術を行う必要があります。近年は以下のような規制や安全対策が強化されています。

### 機器の認可制度

厚生労働省が承認した医療機器のみを使用することが義務付けられています。特にレーザー機器は出力や波長が規制されており、無認可機器の使用は禁止されています。

### 施術者の資格要件

医療脱毛の施術には一定の知識と技術が求められます。多くのクリニックでは、独自のトレーニングプログラムを実施し、施術者のスキル向上に努めています。

### 副作用への対応

施術前のカウンセリングを徹底し、肌タイプや体調に合わせた適切な施術を行うことが重要視されています。また、施術後のアフターケアにも力を入れるクリニックが増えています。

コロナ禍の影響と回復状況

新型コロナウイルスの流行は医療脱毛市場にも大きな影響を与えました。

### 一時的な需要減

緊急事態宣言期間中は多くのクリニックが休業または短縮営業を余儀なくされ、需要が大きく減少しました。特に2020年度は前年比30%以上の落ち込みを記録したクリニックも少なくありませんでした。

### 回復傾向

2021年後半からは需要が回復し始め、2022年にはコロナ前の水準に戻りつつあります。在宅勤務が減り、対面業務が増えたことで、再び脱毛需要が高まっています。

### 新たなサービス形態の登場

コロナ禍をきっかけに、オンラインカウンセリングや予約システムの導入が進みました。また、感染対策として施術間隔を空けるなどの工夫も見られます。

地域別の市場特性

医療脱毛市場には地域ごとに特徴があります。

### 都市部と地方の違い

東京や大阪などの大都市圏ではクリニックの数が多く、競争が激しいため価格が低めに設定されている傾向があります。一方、地方ではクリニックの数が限られるため、価格がやや高めになるケースがあります。

### 地域別の人気部位

都市部では全身脱毛や顔脱毛の需要が高く、地方では部分脱毛を選択する人が多いという傾向があります。また、寒冷地では冬場の施術を好む人が多いなど、気候による違いも見られます。

今後の市場展望

日本の医療脱毛市場は今後も成長が期待されています。主な展望としては以下の点が挙げられます。

### 市場規模の拡大

2025年までに600億円規模に達すると予想されています。特に男性市場や高齢者市場の拡大が成長を牽引すると見込まれています。

### 技術革新の加速

AIを活用したより精密な施術や、痛みをさらに軽減した新技術の登場が期待されています。また、施術時間の短縮も重要な開発テーマです。

### サービス多様化

脱毛だけでなく、肌質改善や美白効果を組み合わせた総合的な美容サービスへの展開が予想されます。また、メンズエステとの連携も強化されるでしょう。

### 海外展開の可能性

日本の高い医療技術を活かし、アジアを中心とした海外市場への進出を図るクリニックも増えると見込まれます。特に観光客向けの医療脱毛ツーリズムに注目が集まっています。

まとめ

日本の医療脱毛市場は、技術の進歩と価格競争により、より身近な美容施術として定着しつつあります。消費者にとっては選択肢が広がり、質の高いサービスをより手頃な価格で受けられるようになりました。今後も市場の成長は続くと予想され、新たな技術やサービスモデルの登場により、さらに進化していくことが期待されます。医療脱毛を検討している消費者にとっては、自分に合ったクリニックとプランを慎重に選ぶことが重要です。

この記事を書いた人

サトっちのアバター サトっち 美容系マーケター

美容メディアの立ち上げや編集長の経験があり、自身でも医療脱毛や痩身内服を受けるなど美容医療の情報収集を欠かさない。常に事業会社のマーケティング組織に身を置き、これまで多数の事業やメディアを担当。

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